「バードフレンドリー®コーヒー」という言葉を聞いたことはありますか?
コーヒーと渡り鳥、一見関係がなさそうに思えますが、実は深い結びつきがあります。
世界的なコーヒー需要の高まりとともに、森林を伐採して大規模な農園を開発する動きが進み、かつて木陰で栽培されていたコーヒー畑が次々と消えていきました。
その結果、多くの渡り鳥が生息地を失い、生態系への影響が懸念されています。
そんな中、渡り鳥と森林を守るために生まれたのが 「バードフレンドリー®認証」 です。
この認証を受けたコーヒーは、環境に配慮した持続可能な方法で生産されており、私たちが選ぶことで自然保護や生産者の支援につながります。
この記事では、バードフレンドリー®コーヒーの概要や認証基準、生産者にとってのメリット、さらには日本で購入できるバードフレンドリー®コーヒーまで詳しく解説します。
環境に優しいコーヒーを選ぶヒントを、ぜひ最後までご覧ください。
※この記事は、バードフレンドリー®コーヒー公式サイト(2025年2月時点)の情報を参考にまとめました。
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目次
バードフレンドリー®とは?


バードフレンドリー®とは、森林伐採を防ぎ渡り鳥を守るためのコーヒーの認証プログラムです。
バードフレンドリー®認証プログラムは、1999年に設立し、スミソニアン渡り鳥センターが運営しています。
スミソニアン渡り鳥センターは、渡り鳥の調査研究・保護を目的としてスミソニアン協会によって立ち上げられました。
バードフレンドリー®が設立した由来
バードフレンドリー®の認証プログラムが設立されたのには、大きな環境問題が由来となっています。
ここでは、渡り鳥と森とコーヒーの関係について詳しく解説します。
コーヒー農園は森林伐採してできている
コーヒー農園は、木陰栽培といって森林を陰にして直射日光から守りながら栽培するのが従来のやり方でした。
しかし世界的な需要と大規模栽培の流れの中で、木陰栽培ではなく、農林を切り開いてまでコーヒー農園が作られるようになっています。
今では森を切り開いて作られるコーヒー農園は全体の75%を占め、従来の木陰栽培をしているコーヒー農園は25%になりました。
(参考:バードフレンドリー®コーヒー)
このまま森林伐採が続くと、自然環境に与える影響は大きく、温暖化にも拍車をかけてしまうことで問題視されていました。
渡り鳥が姿を消した
1990年代後半、そのような森林伐採の流れの中で、北米と中南米を行き来する渡り鳥の姿が減少していることが分かりました。
これは、渡り鳥達が木陰栽培のコーヒー農園の森を休息地として使っていたためです。
特に中南米の森を切り開いたことが大きな原因にあったようです。
このように、渡り鳥達の休息地がどんどん減ってきている状況にあります。
これは生態系を脅かすことなので、何とかしなければいけないという思いで、スミソニアン渡り鳥センターが設立されました。
バードフレンドリー®の認証基準
バードフレンドリー®認証プログラムには、その認証基準が定められています。
以下にその基準をまとめました。
バードフレンドリー®の認証基準
農薬を使わない有機栽培であることはもちろんのこと、渡り鳥の保護や、種の多様性に重きを置いた基準であることが分かります。
ただ木が多ければよいのではなくて、その種類も多様でなければいけない。
ここがバードフレンドリー®認証プログラムの大きな特徴と言えるでしょう。
バードフレンドリー®における農園(生産者)へのメリット
バードフレンドリー®コーヒーは、渡り鳥と森林の保護につながります。
ただ、生産者にもメリットがないことにはこの活動は広がりません。
バードフレンドリー®認証を受けた農園で栽培されたコーヒー豆は、通常のコーヒーとは別のプレミア価格で取引が行われるため、生産者にもメリットが生まれています。
コーヒーの生産地の中心であるコーヒーベルトの地域(赤道をまたいだ北緯25℃~南緯25℃)では、貧困が問題になっています。
さらに近年ではCO2増加による気温上昇に伴って、コーヒーの生産量が落ち込み、コーヒー農家は儲からないというイメージが付いており問題となっています。
これらはコーヒーの2050年問題の一つとして、コーヒー業界において早急に解決しなければいけない議題です。
バードフレンドリー®コーヒーのような、プレミア価格で取引される豆が栽培できれば、貧困対策と環境保全の2つの問題を解決に導くことができます。
似たような取り組みにフェアトレードがあります。
フェアトレードは生産者とバイヤーが適正な価格で取引するために設けられたルールです。
フェアトレードも生産者と環境を守る認証プログラムとして、バードフレンドリー®とともに重要な役割を担っています。
データで見るバードフレンドリー®
バードフレンドリー®認証プログラムを、データで見ていきたいと思います。
バードフレンドリー®認証取得している農園 | 12カ国 59農園 面積 約17,000ha |
コーヒー1袋(200g)あたりの還元額 | $0.11 |
バードフレンドリー®認証農園に生息する鳥の種類 | 1,786種類 |
バードフレンドリー®コーヒーの日本でのトータル販売量(2005~2022年のデータ) | 豆換算2,166,101kg 1杯換算(12g 160ml)180,508,417杯 |
バードフレンドリー®認証取得している農園の面積は約17,000haで、これは東京ドーム3,617個分にも相当します。
バードフレンドリー®コーヒーが初めて販売されたのが2000年なので、もうこの活動は25年以上経っています。
長い時間をかけて、多くの農園でこのバードフレンドリー®認証が進んでいったものだと考えられます。
日本においても、1億8000杯以上のバードフレンドリー®コーヒーが販売されており、生産者、渡り鳥、森林保護のためになっています。
バードフレンドリー®認証農園
ここからは世界中のバードフレンドリー®認証農園を紹介していきます。
農園だけでなく、農協や組合といったその地域の団体がまとめて認証を受けているケースもあります。
バードフレンドリー®コーヒー公式サイトの2025年2月時点の情報を参考にしています。
グアテマラ アソバグリ組合

グアテマラのバリージャス地区にある農園の組合です。
生産者たちは、マヤの先住民であるカンホバル族の方たちが多いようです。
生産面積 | 611.73ha |
生産農園数 | 426農家 |
生産量 | 8,750袋/69kg |
標高 | 1,350m-1,700m |
農園にくる代表的な渡り鳥 | ルビーキクイタダキ |
グアテマラ フェセッグ組合

こちらは、コーヒーが安定的な販売と収入に繋がることを生産者にアドバイスしたり、教育に力を入れたりしている組合です。
生産者自らが品質向上を狙って、収入が増えることを実感することはとても大切なことです。
生産面積 | 68.68ha |
生産農園数 | 7農園 |
生産量 | 770袋/69kg |
標高 | 900m-1,600m |
農園にくる代表的な渡り鳥 | ヒメレンジャク |
エルサルバドル クスカチャパ農協

エルサルバドルでは、さび病というコーヒーの病気で、コーヒーの生産量が落ちこんでいます。
これによりコーヒー農家を続けることが難しい状況に追い込まれています。
この農協では、そのような苦しんでいる農家に生産指導を行い、生産量の回復の手助けをおこなっています。
生産面積 | 261.25ha |
生産農園数 | 10農園 |
生産量 | 2,790袋/69kg |
標高 | 900m-1,450m |
農園にくる代表的な渡り鳥 | ノドアカハチドリ |
ホンジュラス コムサ組合

こちらの組合では、バードフレンドリー®に加え、フェアトレード認証もしているサステナブルな活動が盛んな組合です。
ホンジュラスはコーヒー大国ということもあり、そのような持続可能なコーヒー農業に対する認識も深いことが伺えます。
生産面積 | 424.04ha |
生産農園数 | 100農園 |
生産量 | 9,210袋/69kg |
標高 | 1,200m-1,800m |
農園にくる代表的な渡り鳥 | ネコマネドリ |
コロンビア アグロベルリン農園

コロンビア北部にある原生林に囲まれた農園です。
ウォッシュドの精製においても湧水を使用するという、自然の恵みを利用したコーヒー農家です。
たった2農家しかない農園ですが、180ha以上という広大な土地でコーヒー栽培をしています。
生産面積 | 184.68ha |
生産農園数 | 2農家 |
生産量 | 3,000袋/70kg |
標高 | 1,350m-1,700m |
農園にくる代表的な渡り鳥 | キンバネアメリカムシクイ |
ペルー ラ・フロリダ農協

97農家が属する大所帯の農協です。
その多くが小規模農家で、こちらの農協がすべて管理しています。
科学技術を駆使して生産管理に力をいれている先進的な農協です。
生産面積 | 495.61ha |
生産農園数 | 97農家 |
生産量 | 2,710袋/69kg |
標高 | 1,350m-1,850m |
農園にくる代表的な渡り鳥 | アカフウキンチョウ |
エチオピア オロミア組合

コーヒー大国エチオピア最大の組合が、このオロミア組合です。
その組合員数は10万人にも及びます。
フェアトレード認証も取得しており、規模が大きいだけでなく環境や生産者にも配慮した組合です。
生産面積 | 2,311ha |
生産農園数 | 2,217農家 |
生産量 | 1,150袋/60kg |
標高 | 1,550m-2,200m |
農園にくる代表的な渡り鳥 | アビシニアコウライウグイス |
身近に買えるバードフレンドリー®コーヒー紹介
私たちの身近で購入することができるバードフレンドリー®コーヒーを紹介します。
バードフレンドリー®コーヒーを購入することで、生産者を守り、渡り鳥や森林保護に協力することができます。
カルディコーヒーファームの「バードフレンドリー(R)ブレンド」


カルディでは、「バードフレンドリー(R)ブレンド」というバードフレンドリー®認証コーヒーを取り扱っています。
コロンビア、エルサルバドル、グアテマラのブレンド豆です。
また、有機JASも認証しており環境に配慮した豆ということが分かります。
小川珈琲の「バードフレンドリー ブレンド」


小川珈琲でも、「バードフレンドリー ブレンド」というバードフレンドリー®認証コーヒーを取り扱っています。
エチオピア、グアテマラ、ホンジュラスのブレンド豆です。
さらに、このバードフレンドリー ブレンドは、バードフレンドリー®認証に加えて、有機JAS認証とフェアトレード認証と3つの認証を受けている、とても環境や生産者に配慮したサスティナブルコーヒーです。
パッケージデザインは販売時期によっていろいろあるようですね↓↓↓
まとめ:バードフレンドリー®コーヒーがもたらす未来
バードフレンドリー®コーヒーは、渡り鳥や森林を守るだけでなく、持続可能な農業と生産者の生活向上にも貢献する認証制度です。
従来の森林を活かしたコーヒー栽培を守ることで、生態系の保全にもつながります。
また、認証を受けた農園では、プレミアム価格での取引が可能になり、生産者にとってもメリットが生まれます。
気候変動によるコーヒー生産の不安定化が懸念される中で、バードフレンドリー®の取り組みは、環境と経済の両面からコーヒー産業を支える重要な役割を果たしています。
私たち消費者ができることは、日々のコーヒー選びの中でバードフレンドリー®認証コーヒーを意識することです。
一杯のコーヒーが、生産者の暮らしを支え、森を守り、渡り鳥の未来をつなげることにつながるのです。
ぜひ、次にコーヒーを選ぶときは、バードフレンドリー®認証のものを手に取ってみてはいかがでしょうか?