2025年、コーヒーの値上げが止まりません。
以下は、株式会社インテージが調査した、全国約6,000店舗の小売店販売データを基にした、前年比の販売金額と今年の販売金額の上昇比率をまとめたトップ15位までのランキングです。(集計期間2025年1-10月)
「3位にインスタントコーヒー」「5位にレギュラーコーヒー」と、なんとコーヒーの品目が2つも上位にランクインしています。
ちなみに、2024年の同じ調査では、コーヒーはトップ10位にすらランクインしていません。
つまり、2025年になって、すごい勢いで高騰していることが分かります。
この記事では、コーヒーインストラクター2級の筆者が、なぜ2025年にコーヒーが高騰しているのか?を統計やデータをもとに解説。
そして、2025年に実際に値上げした家庭用コーヒーを一挙にまとめて紹介します。

目次
2025年、コーヒーが値上げした理由
2025年にコーヒーが値上げした背景には、複数の要因が重なっています。
コーヒーは生豆を海外から輸入しており、国際相場や為替、産地の天候、物流環境などの影響を強く受ける商品です。
近年は、生豆価格の高騰に加え、円安の長期化や自然災害による生産不安、エネルギー・輸送コストの上昇が同時に進んでいます。
こうした構造的な要因が積み重なり、2025年の値上げにつながっています。
コーヒー生豆国際相場が上がっている

2025年にコーヒーが値上げした最大の理由の一つが、コーヒー生豆の国際相場そのものが長期的に上昇していることです。
上の図は、コーヒー生豆の指標として使われるニューヨーク先物価格(セント/ポンド)の推移を示したものですが、1990年代以降、気候変動や世界情勢の影響を受けながら、価格が大きく上下を繰り返してきたことが分かります。
特に注目すべきなのは、ブラジルの天候不順です。
ブラジルは世界最大のコーヒー生産国であり、その生産量が不安定になると、国際相場全体に直接的な影響を与えます。
さらに2010年代以降は、異常気象が「一時的なもの」ではなく恒常的なリスクとして意識されるようになり、先物市場では将来の供給不安を織り込む動きが強まっています。
ちなみにコーヒー生豆国際相場は、2024年12月におよそ半世紀ぶりに過去最高を記録しており、ここにきて異常な高騰を見せています。
あらゆるコストが上がり企業努力に限界が来ている
値上がりしているのはコーヒー生豆だけではありません。
コーヒーを商品として消費者に届けるまでには、様々なコストがかかっています。
エネルギー価格の高騰、焙煎工場の生産コスト、包装資材費、輸送費などありとあらゆるコストが、軒並み上昇しています。
今まで企業努力で何とかしのげていたものが、ここにきて限界が来ているものと考えられます。
日本の円安傾向
コーヒーの値上げを後押ししているもう一つの要因が、日本の円安傾向です。
コーヒー生豆は国際的に米ドル建てで取引されているため、円安が進むほど、日本企業が支払う仕入れコストは自動的に上昇します。
たとえば、同じ国際相場水準であっても、
円高のとき:円換算の仕入れコストは抑えられる
円安のとき:円換算の仕入れコストが跳ね上がる
という構造になっています。
近年は1ドル=140円台〜150円台と、過去と比べても円安水準が長期化しています。
つまり、2025年のコーヒー値上げは、「国際相場が上がっているから」だけではなく、「円安によって日本側の負担がさらに増えているから」
という二重構造によって起きていると言えます。
栽培地域の自然災害

こちらのデータは、全日本コーヒー協会の日本の国別コーヒー生豆輸入量のデータです。
これを見れば、日本は特にブラジルとベトナムにコーヒーの輸入に大きく依存していることが分かります。
例えば、ブラジルでは2021年に干ばつと霜害が発生し、アラビカ種の生産が大きく減少しています。
また、2023〜2024年にかけてベトナムでも干ばつにより、生産量が減少しています。
現在、コーヒーの栽培地域では、こうした異常気象の影響によって安定した生産量を確保できないケースが増加しています。
さらに、コーヒーは苗木を植えてから収穫できるまでに3〜5年程度の時間がかかる作物です。
そのため、数年前に起きた自然災害が、数年後の供給量不足や価格上昇に影響を与えるため、2025年になって表面化してきたと考えられます。
【2025年】値上げしたコーヒー総まとめ!
2025年、家庭用のコーヒーで値上げされたものをまとめました。
一部、値上げ商品数があまりに多い企業は、省略して紹介していますのでご了承ください。
詳細な銘柄公開がない場合は、その旨を記載しています。
| メーカー | 値上げした家庭用コーヒー商品 |
| UCC上島珈琲 | 10月1日出荷分から、家庭用飲料製品の一部のメーカー出荷価格を改定。 小売店の実質店頭価格は、10~25%程度上昇見込み。 詳細な銘柄の公表はなし 参考公式資料:https://www.ucc.co.jp/company/news/2025/rel250625c.html |
| セブンイレブン | 2025年7月7日より順次価格改定。 セブンカフェ ホットコーヒーR 112円(税込120.96円)→ 130円(税込140.4円) セブンカフェ ホットコーヒーL 167円(税込180.36円)→ 204円(税込220.32円) セブンカフェ アイスコーヒーR 112円(税込120.96円)→ 130円(税込140.4円) セブンカフェ アイスコーヒーL 195円(税込210.60円)→ 232円(税込250.56円) 参考公式資料:https://www.sej.co.jp/company/info/182036.html |
| ローソン | 2025年7月1日に価格改定。 ※公式発表のソースが見当たらないため、日本経済新聞の報道を参考 「マチカフェ」で一部商品の13品目を平均10%ほど値上げ Sサイズ 20円引き上げて160円 Mサイズの場合 ホットのコーヒーとカフェラテは210円から230円に。 アイスコーヒーは260円に、アイスカフェラテは280円にそれぞれ20円ずつ値上げ。 ホットのカフェラテLサイズは270円から288円に値上げ。 |
| ファミリーマート | 5月27日より、ファミカフェ商品を価格変更 Sアイスコーヒー 130円→145円 Mアイスコーヒー 220円→240円 BIGアイスコーヒー 310円→330円 ブレンド 130円→145円 ブレンドL 240円→260円 カフェラテ 200円→220円 アイスカフェラテ 220円→240円 BIGカフェラテアイス 310円→330円 アイスアーモンドラテ 260円→280円 BIGアーモンド 340円→360円 アーモンドラテ 240円→260円 アーモンドミルクラテL 305円→330円 参考公式資料:https://www.okinawa-familymart.jp/emergency/30292 |
| キーコーヒー | 2025年10月1日納品分より 小売店の実質店頭価格は10~20%程度の上昇見込み。 参考公式資料:https://www.keycoffee.co.jp/news/detail/news_250722?srsltid=AfmBOooAjVlxWHM_mVwUjtrVCQR9clJWTlAznb2CSCxvNwMem-rUKRHD |
| スターバックスコーヒー | 2025年11月10日より、全国のスターバックス店舗及び、公式オンラインストアで販売している定番の家庭用コーヒー商品、ティー商品の価格を改定。 定番のコーヒー豆の価格改定は2022年4月以来、およそ3年半ぶり。 家庭用コーヒー商品は40円~300円(8%税込)の改定。 ティー商品は110円~120円(8%税込)の改定。 参考公式資料:https://www.starbucks.co.jp/press_release/pr2026-5645.php?srsltid=AfmBOoo1pwghU8AE8abDjUlOLOMT1M_Iwezprcs565hNzBUNR8EcntSx |
| ネスレ | 2025年8月1日納品分より 54点と商品点数が非常に多いので、有名な銘柄だけ紹介します(詳しくは下部参考資料へ) 【570円 → 678円】 ネスカフェ エクセラ 40g 【548 円→ 659 円】 ネスカフェ ゴールドブレンド 50g 【722円 → 868円】 ネスカフェ ふわラテ 26P ネスカフェ ふわラテ ハーフ&ハーフ 26P ネスカフェ ふわラテ まったり深い味 26P ネスカフェ ふわラテ まろやかミルク 26P ネスカフェ ふわラテ ほっこりカフェインレス 20P ネスカフェ ふわラテ アイスラテ 18P ネスレ ふわラテ 香るミルクティー 26P ネスレ ふわラテ 香る抹茶ラテ 20P 【506円 → 621円】 ネスカフェ ゴールドブレンド スティック ブラック 20P ネスカフェ ゴールドブレンド コク深め スティック ブラック 20P ネスカフェ ゴールドブレンド カフェインレス スティック ブラック 14P ネスカフェ ゴールドブレンド カフェインハーフ スティック ブラック 20P ネスカフェ アイスブレンド スティック ブラック 20P ネスカフェ 香味焙煎 ひとときの贅沢 スティック ブラック 20P 【624円 → 750円】 ネスカフェ エクセラ スティックコーヒー 22P ネスカフェ ゴールドブレンド スティックコーヒー 18P ネスカフェ ゴールドブレンド コク深め スティックコーヒー 18P ネスカフェ 香味焙煎 ひとときの贅沢 スティックコーヒー 18P 参考公式資料:https://www.nestle.co.jp/sites/g/files/pydnoa331/files/2025-05/20250526_nestle.pdf |
| 味の素AGF | ・2025年7月1日納品分より価格改定により25%~55%値上げ見込み ※本数違い、分量違い、袋、瓶、通販限定などは書き分けてません、銘柄名のみを並べています 【スティックタイプ】 「ブレンディ®」スティック 「ブレンディ®」スティック アソート 「ブレンディ®カフェラトリー®」スティック 「ブレンディ®カフェラトリー®」スティック アソート 「ちょっと贅沢な珈琲店®」スティックコーヒー 【スティックのブラックタイプ】 「ちょっと贅沢な珈琲店®」スティックブラック 「ちょっと贅沢な珈琲店®ブラックインボックス®」 「ちょっと贅沢な珈琲店®」プレミアムブラック 「ブレンディ®」スティックブラック 「ブレンディ®」フォーミー スティックブラック 「ブレンディ®」スティックブラックアソート 「ブレンディ®」スティックブラック 毎日の腸活コーヒー 「ブレンディ®」スティックブラック やすらぎのカフェインレス 「マキシム®」 スティック 【インスタントコーヒー】 「ブレンディ®」 「ブレンディ®」毎日の腸活コーヒー 「ちょっと贅沢な珈琲店®」 「マキシム®」 【レギュラーコーヒー】 「ちょっと贅沢な珈琲店®」レギュラー・コーヒー 「マキシム®」レギュラー・コーヒー 「森彦の時間®」 「煎」レギュラー・コーヒー 【ドリップパック】 「ちょっと贅沢な珈琲店®」レギュラー・コーヒー プレミアムドリップ 「ちょっと贅沢な珈琲店®」レギュラー・コーヒー ドリップパック 「ちょっと贅沢な珈琲店®」 レギュラー・コーヒー ドリップパックアソート 「ちょっと贅沢な珈琲店®」レギュラー・コーヒー プレミアムドリップ アソート 「ブレンディ®」レギュラー・コーヒー ドリップパック 「煎」レギュラー・コーヒー プレミアムドリップ 参考公式資料:https://agf.ajinomoto.co.jp/news/2025-03-31-2216.html ・2025年10月1日納品分より価格改定により25%~35%値上げ見込み ※本数違い、分量違い、袋、瓶、通販限定などは書き分けてません、銘柄名のみを並べています 「ブレンディ®」ポーション 参考公式資料:https://agf.ajinomoto.co.jp/news/2025-07-01-2232.html |
| 小川珈琲 | 2025年8月1日より 一部を除く家庭用レギュラーコーヒー製品の価格を改定。(詳細な銘柄の公表はなし) 小売店の実質店頭価格は、約10%~40%上昇見込み。 参考公式資料:https://www.oc-ogawa.co.jp/news/3081/ |
| 無印良品 | 2025年9月5日より ・オリジナルブレンド コーヒー (ライトテイスト、ミディアムテイスト、ダークテイスト3種すべて) 豆・粉 850円 → 950円 ドリップバッグ 650円 → 750円 ・オーガニックコーヒー カフェインレス 豆・粉 890円 → 990円 ・オーガニックコーヒー カフェインレス ドリップ 650円 → 790円 ・オリジナルブレンド コーヒー ミディアムテイスト 特選 粉 1,490円 → 1,590円 ・オーガニックコーヒー カフェインレス お徳用 粉 1,650円 → 1,790円 ・オリジナルブレンド コーヒー カフェオレベース 無糖 490円 → 590円 ・カフェインレス カフェオレベース 無糖 490円 → 590円 ・オリジナルブレンド コーヒー 無糖 150円 → 190円 参考公式資料:https://www.muji.com/public/media/jp/doc/19597042/25AW%E4%BE%A1%E6%A0%BC%E6%94%B9%E5%AE%9A%E3%81%AE%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B.pdf |
| サントリー | 2025年10月1日出荷分より 主な容器のメーカー希望小売価格改定。 ペットボトル:6%~25%アップ 缶:10%~24%アップ (詳細な銘柄の公表はないが、ボスシリーズがここにあてはまる) 参考公式資料:https://www.suntory.co.jp/softdrink/news/pr/article/SBF1576.html |
| ダイドー | 2025年10月1日納品分より 一部商品を除く缶商品、ペットボトル商品(詳細な銘柄の公表はなし) メーカー税抜き希望小売価格より+10~15% 改定 参考公式資料:https://www.dydo.co.jp/news/detail/20250430153000.html |
まとめ:2050年問題が解決されない限り、コーヒーの値上げは続く
日本は、コーヒーの輸入量・消費量ともに世界でも上位に入る、いわばコーヒー消費大国です(2024年時点)。
しかしその一方で、日本が日常的に飲んでいるコーヒーは、海外の限られた生産国と、その安定した生産環境に大きく依存しているのが現実です。
近年続く異常気象や気温上昇は、すでに生産量の減少や国際相場の高騰という形で表面化していますが、これはあくまで「序章」にすぎません。
このまま気候変動への対策が進まなければ、2050年頃には、現在の主要なコーヒー栽培適地が半減すると指摘されています。
これが、いわゆる「コーヒーの2050年問題」です。
CO₂排出を完全にゼロにし、気候変動そのものを止めることは、現実的には難しいかもしれません。
しかし、この気候変動のスピードを「遅らせる」ことは可能です。
そうすることで、耐暑性のある品種改良や、生産国の農家が持続的に栽培を続けられる仕組みづくりといった、新たな解決策が生まれる余地が広がります。
私たち消費者にできることは、フェアトレードのようなサステナブル認証のコーヒーを選ぶといったささいなことかもしれません。
「気軽にコーヒーを飲む」という、ささやかな未来を守るために、できることから始めていきましょう。
コーヒーの2050年問題を、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事に詳しくまとめています。
