コーヒーの抽出方法にはさまざまな種類がありますが、近年あらためて注目を集めているのが「浸漬式(しんししき)」です。
お湯を注いで待つだけというシンプルな工程ながら、安定した味わいを再現しやすく、初心者から上級者まで幅広く支持されています。
本記事では、コーヒーインストラクター2級の筆者が、
- 透過式との違い
- 浸漬式に向いているコーヒー豆の特徴
- 浸漬式で初心者でも美味しく淹れるコツ
そして、おすすめの浸漬式ドリッパーまでを詳しく解説します。
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目次
浸漬式とは?
浸漬式とは、コーヒー粉を一定時間お湯に浸して抽出する方法のことです。
お湯を注いでからしばらく待ち、成分が十分に溶け出したタイミングで抽出を終えるのが特徴です。
これらはお湯とコーヒー粉を一度しっかり混ぜ合わせ、時間をかけて抽出するため、粉全体に均一に成分が行き渡りやすい構造になっています。
透過式のように注ぎ方やスピードに神経質になる必要がなく、誰が淹れても味が安定しやすいという点が、浸漬式の大きな特徴です。
浸漬式と透過式の違い
浸漬式は、コーヒー粉を「お湯に浸して」抽出する方法です。
透過式は、コーヒー粉に「お湯を通して」抽出する方法です。
| メリット | デメリット | |
| 浸漬式 | ・抽出時間で濃度を調整できる ・抽出ムラが出にくい ・初心者でも安定した味になりやすい ・豆の個性を均一に引き出しやすい ・細口ケトルがなくても抽出可能 | ・繊細な味の調整がしにくい ・長時間浸すとえぐみや渋みが出やすい |
| 透過式 | ・味や香りを細かくコントロールできる ・クリーンで透明感のある味になりやすい ・ハンドドリップの工程を楽しめる | ・抽出技術によって味に差が出やすい ・湯量・速度・注ぎ方の管理が必要 ・細口ケトルがないと、抽出コントロールが難しい |
- 安定した味を楽しみたい人は、浸漬式がおすすめ!
- 抽出の過程を楽しみたい人は、透過式がおすすめ!
どちらが優れているというわけではなく、自分に合った抽出方法を選びましょう。
浸漬式の抽出時間の目安
「〇分間浸漬すれば一番おいしい」という正解はありません。
浸漬式は、コーヒー粉を浸漬させる時間によって、味わいを変えることができます。
浸漬式ドリッパーとして有名なハリオのスイッチのマニュアルには、「コーヒー粉20g、お湯240mlで、約2分」という時間が書かれています。
(参考:浸漬式ドリッパースイッチ)
全く時間の見当がつかないのであれば、まずはこれを参考に、自分の器具で微調整するのがいいと思います。
ただ、注意したいのが、これはあくまでも目安です。
挽き目、コーヒーの種類、焙煎度によっても味わいは変わるので、この目安を基に、自分で時間を測って工夫するのが、浸漬式の醍醐味です。
浸漬式に向いているコーヒー豆
浸漬式は、コーヒー粉全体をお湯に浸してじっくり抽出するため、豆が持つ本来のポテンシャルをしっかり引き出せる抽出方法です。
そのため以下のような、品質が高く、風味が特徴的なコーヒー豆こそ、浸漬式に向いていると思います。
※これは私個人の経験から基づいた考え方です。
・スぺシャルティコーヒー
雑味が少なく、濃く抽出しても、口当たりがいいため。
・ナチュラル精製の豆
果実感のある甘さやフルーティーな酸味をより引き出せるため。
・アナエロビック・ファーメンテーション
嫌気性発酵による、ワインやトロピカルフルーツのような特徴的な味わいをより引き出せるため。
・インフューズドコーヒー
発酵時にフルーツ、ハーブ、ヨーグルトなどを漬け込んで、香りを添加させたコーヒー。
これらの魅力的な香りをより引き出せるため。
浸漬式で初心者でも美味しく淹れるコツ
浸漬式はシンプルな抽出方法ですが、いくつかのポイントを押さえるだけで、味の安定感が大きく変わります。
ここでは、特に初心者の方が意識したい「失敗しにくく、美味しく仕上げるためのコツ」を3つ紹介します。
① 沸騰したお湯は使わない
浸漬式では、お湯の温度が味に大きく影響します。
沸騰直後の100℃のお湯を使うと、コーヒーの苦味や雑味が出やすくなるため、高くてもお湯(93℃未満)を使うのがおすすめです。
特に浅煎りやフルーティーな豆の場合、高温すぎると風味が荒くなることがあります。
② 軽くかき混ぜて、成分を均一にする
お湯を注いだ直後に、ティースプーンで一度全体をかき混ぜることで、粉全体にお湯が行き渡りやすくなります。
これにより、抽出ムラが減り、味のバランスが整います。
③ 挽き目は“中~中粗挽き”くらいを意識する
浸漬式では、粉が細かすぎると過抽出になりやすく、苦味やえぐみが出やすくなります。
また、フレンチプレスなら、細かい粉は金属フィルターを抜けて、ざらついた口当たりになりやすいです。
ただ、絶対この挽き目がいいというわけでもなく、あくまでおすすめです。
浸漬式ドリッパーのおすすめ5選
浸漬式の魅力をしっかり味わうためには、器具選びも重要です。
ここでは、扱いやすさ・味の安定性・人気の高さなどを基準に、おすすめの浸漬式ドリッパーを紹介します。
①【HARIO/ハリオ】浸漬式ドリッパー スイッチ
ハリオの「浸漬式ドリッパー スイッチ」は、浸漬式と透過式を切り替えて使える、汎用性の高いドリッパーです。
底部にあるスイッチを押すと、底の弁が開き任意のタイミングで、上部で溜めたお湯を落とすことができます。
浸漬式ならではの“安定した味わい”を簡単に再現できるため、初心者でも失敗しにくく、同時にコーヒーの味の違いを学びたい人にも適しています。
また、V60ドリッパーと同じ円すい形状を採用しているため、透過式としても使用できるのが大きな特徴です。
おすすめポイント
- 浸漬式と透過式を切り替えて使える2WAY仕様
- 世界大会でもよく使われる名作ドリッパー
- 上部のガラス部分は、ハリオの他製品「NEO」や「MUGEN」と切り替え可能
(上部を変えることで、軽い樹脂製になって、お湯が落ちる速さを速くしたり遅くしたりできます)
スイッチは、サイズ違い、素材違い、改造などできることが多いです。
もっと詳しく知りたい方は、下の記事にスイッチのことを詳しくまとめているので、参考にしてください。
②【E.K.Int’l】クレバードリッパー
クレバードリッパーは、浸漬式を代表する定番モデルのひとつで、シンプルな構造と安定した抽出が魅力のドリッパーです。
お湯を注いで一定時間待ち、カップにセットした瞬間に、底の弁が浮き自動的に抽出が始まる仕組みになっています。
クレバーは台形で、ペーパーは市販の台形ペーパーでも、少し角度を工夫して折れば使えます。
またフタが付いており、抽出中の香りを閉じ込め、温度減少も防げます。
安定した抽出と、セットと同時に抽出という分かりやすい機構から、喫茶店などでスタッフのオペレーションを統一する意味で採用されることもあるドリッパーです。
おすすめポイント
・喫茶店で使われることもある、浸漬式ドリッパーの名機
・セットした瞬間に抽出される仕組みが、手軽で簡単
・フタ付きで、浸漬中、香りを閉じ込め、温度低下も防げる
③【Melitta/メリタ】流速コーヒーフィルター
メリタの「流速コーヒーフィルター」は、お湯の流れるスピードを自由にコントロールできるドリッパーです。
流速を変えれることが特徴ですが、完全にお湯を止めることもできるため、浸漬式のように使うことができます。
レバーに「0~4」という番号があり、0で全閉、4で最速になります。
ちなみにこの番号は、カチッと段階的に変える仕様ではなく、無段階に調節できます。
台形で、メリタの通常のペーパーがそのまま使えます。
やや大きめの武骨なデザインですが、分解して洗浄することも可能です。(本体込みで5パーツになる)
おすすめポイント
- 浸漬式と透過式を切り替えて使える2WAY仕様
- 抽出速度を自由自在に変えられるため、より複雑なアレンジレシピも可能
④【HARIO/ハリオ】ティー&コーヒーメーカーマグ
ハリオの「ティー&コーヒーメーカー マグ」は、コーヒーと茶葉の両方に対応した浸漬式ドリッパーです。
専用のストレーナーにコーヒー粉や茶葉を入れ、そのまま付属のカップの中でフタをして浸漬させます。
専用ストレーナーを使うため、ペーパーフィルターを別途購入する必要がなく、初心者も始めやすいのが特徴です。
抽出後は、カップに立てかけられるようになってます。
また、保温のフタが抽出後の受け皿にもなり、この配慮の行き届いたデザイン設計も魅力的です。
マグはセラミックコーティングで二重真空構造になっています。
おすすめポイント
- コーヒーと茶葉の両方に対応
- ペーパーフィルターいらず
- コーヒー油分も抽出しやすい
- ストレーナーの抽出後の処理まで考えられたデザイン
⑤【HARIO/ハリオ】カフェプレス・U
ハリオの「カフェプレス・U」は、フレンチプレスタイプの浸漬式コーヒー器具です。
フレンチプレスは、抽出後に金属フィルターを上からプレスして、抽出液からコーヒー粉を濾す抽出方法です。
金属フィルターを使用することで、コーヒーオイルまでしっかり抽出でき、豆本来のコクや厚みをダイレクトに味わえるのが特徴です。
シンプルな構造で扱いやすく、コーヒー粉とお湯を入れて数分待つだけで抽出できるため、特別な技術は必要ありません。
ペーパーフィルターを使わない分、コーヒーの質感や香りをしっかり楽しめる点も魅力です。
おすすめポイント
- 伝統的なフレンチプレスを手軽に始められる
- ペーパーフィルターいらず
- コーヒー油分も抽出しやすい
透過式ドリッパーでも自作で浸漬式を淹れる方法
浸漬式の器具を使わずに、透過式ドリッパーで、自作で浸漬式を淹れることもできます。
ここでは、ハリオのスイッチのマニュアルの「コーヒー粉20g、お湯240mlで、約2分」をもとに、透過式のV60ドリッパーで実践した様子をお見せします。
(参考:浸漬式ドリッパースイッチ)
もし、浸漬式ドリッパーがどんな味わいか分からずに、悩んでいるのであれば、一度このように自分で疑似的に浸漬式をやってみて、味わいの違いを確認してみるのも、いいと思います。





液さえ注ぎ切れば、底にたまった粉まで移す必要はない

まとめ:浸漬式ドリッパーは初心者からプロまでおすすめな抽出方
浸漬式は、コーヒー粉をお湯に浸して抽出するシンプルな方法ながら、味の安定性が高く、誰でも再現しやすいのが最大の魅力です。
抽出の難易度が低いため、コーヒー初心者でも失敗しにくく、同時に豆の個性をしっかり楽しめる点が支持されています。
また、スペシャルティコーヒーやナチュラル、アナエロなど、個性の強い豆とも相性が良く、抽出条件を少し変えるだけで味の変化を楽しめるのも魅力です。
「安定しておいしいコーヒーを淹れたい」という方は、ぜひ自分に合った浸漬式ドリッパーを取り入れてみてください。
もし、透過式ドリッパーが気になる方は、以下の記事の円すい形の透過式ドリッパーの記事も参考にしてください。

