アナエロビック・ファーメンテーションとは?

コーヒー知識

アナエロビック・ファーメンテーションとは?その特徴と精製方法

アナエロ。

コーヒーを趣味にしている人なら、一度は聞いたことがある言葉だと思います。

コーヒーに詳しい人が、みんな口を揃えて「これはアナエロだから・・」とか「アナエロはすごい」といったように、よくアナエロを取り上げているので気になっている人も多いと思います。

アナエロとは、アナエロビック・ファーメンテーションというコーヒーの精製方法の一つです。

この記事では、アナエロの意味や特徴、またアナエロから派生した精製方法についても触れていきます。

初心者にも分かりやすく解説していきますので、今日からみなさんもぜひ「アナエロ」を熱く語って下さい(笑)

アナエロビック・ファーメンテーションとは


アナエロビック・ファーメンテーションは、嫌気性発酵と呼ばれるコーヒーの精製方法です。

ここでは、アナエロが生まれた背景、意味、特徴について解説します。
 

アナエロが生まれた背景

アナエロビック・ファーメンテーションが生まれた背景には、2つの理由があります。

  • 気候変動によるフレーバーの損失
  • ワインの製法からの転用

近年、温暖化による影響で、さび病などでコーヒーの生産量や質が落ちてきています。

特にアラビカ種はさび病や気候変動に弱いため、その対策としてアラビカ種をロブスタ種に接ぎ木が行われるようになりました。

結果、さび病や気候変動に強いハイブリッド種が、増えてきています。

ただハイブリッド種は、通常のものよりフレーバーが出にくく、コーヒーの特性が失われていることがあります。

生産者としては、フレーバーの多い魅力あるコーヒーを作って、儲けを出さなければいけません。

そのような状況で考え出された精製方法の一つがアナエロビック・ファーメンテーションなのです。

またアナエロのような嫌気性発酵は、ワインの世界で昔から取り入れられていた方法で、これをコーヒーにも転用できないかと考えて生まれた流れもあります。

コーヒーの気候変動に対する問題は、以下の記事を参考にしてください。

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アナエロの英語の意味は?

アナエロビック・ファーメンテーション「Anaerobic fermentation」は、日本語にすると「嫌気性発酵」という意味です。

「Aerobic」エアロビック(好気性)に、「An」という否定の言葉が付いた反対語になります。

日本では「アナエロ」と略されることが多いです。

他にも「アナエロビコ」「アナエロビック」などと言う人もいますが、すべて同様の意味です。
 

アナエロの特徴や味

アナエロビック・ファーメンテーションの大きな特徴は、発酵の仕方です。

通常のナチュラルやウォッシュトのような精製方法では、発酵時に微生物が酸素を取り込める状態になっています。

そのため、酸素を好む微生物により発酵が進みます。

しかし、アナエロビック・ファーメンテーションでは、これを密閉タンクで無酸素状態にします。

そうすることで、酸素がなくても活発に生きられる微生物のみで発酵が進むことになります。

同じ発酵でも、発酵に使われる微生物の種類が違うのです。

これは味にも大きな影響を与えます。

一般的には、ワインやフルーツのようなユニークなフレーバーが多く感じられるようになると言われています。

この味の複雑なニュアンスが、いま世界のコーヒーシーンを沸き立たせ、「アナエロ」は一つのトレンドになっています。

アナエロビック・ファーメンテーションの精製方法

アナエロビック・ファーメンテーションの精製方法の仕組み

アナエロビック・ファーメンテーションの精製方法を簡単に紹介します。

精製方法といっても、発酵の過程が特徴的なため、発酵をメインに説明していきます。

アナエロの発酵の流れ

  1. タンクにコーヒーチェリーを密閉する
  2. タンク内の酸素により、好気性発酵が進みガスが発生する
  3. 発生したガスは管を通り、タンクから抜けていく
  4. やがて無酸素状態になる
  5. 無酸素を好む微生物により、嫌気性発酵が始まる

ちなみに、アナエロの発酵は、ナチュラル(果実のまま)でも、ウォッシュト(パーチメント)でも出来ます。

アナエロビック・ファーメンテーションは、発酵で使われるタンクに大きな特徴があります。

それは、無酸素状態を作り出すための逆止弁の役割を果たす管が付いていることです。

そして、この管の先には容器に入れた水に漬けられています。

アナエロでは、最初は好気性発酵が始まります。

好気性発酵で生まれたガスが、管を通ってブクブクと容器の水を通り抜けて、徐々に無酸素状態になるという仕組みです。

アナエロから派生した精製方法

アナエロビック・ファーメンテーションが世界中で話題になり、この精製方法からいろんな研究が進みました。

いまでも各農園で独自の精製方法が多数生まれており、そのすべてを把握することは正直難しいです。

ここでは、アナエロビック・ファーメンテーションから派生し、ある程度認知されるようになった精製方法をまとめました。

アナエロから派生した精製方法

ダブルアナエロビック・ファーメンテーション
嫌気性発酵を2回行う


カーボニック・マセレーション
タンクにCO2を注入して、一気に無酸素状態を作り、発酵させる


イースト・ファーメンテーション
酵母を添加して発酵させる


ラクティック・ファーメンテーション
乳酸菌を添加して発酵させる

アナエロビックから始まるインフューズドコーヒーの問題点

アナエロビック・ファーメンテーションからの派生で、何かを添加することで、味やフレーバーを劇的に変化できることが分かってきました。

コーヒーに何かを漬け込むことで味を変えているコーヒーのことを、インフューズドコーヒーと言います。

インフューズドコーヒーの中には、シロップ、フルーツ、ハーブのように様々なものが使用されその味の違いも大きく、注目を浴びました。

ただ品評会のような場では、このインフューズドコーヒーは認められない場合が多いです。

実際、あとからインフューズドコーヒーであることが判明して失格になった事例もあります。

これは、厳正な品評会の場においては、コーヒーチェリー本来の味と風味が純粋に評価されるべきだからです。

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